英国の競争・市場庁(CMA)は、今年新たに施行された「デジタル市場・競争・消費者(DMCC)法」に基づき、米国の巨大テック企業であるApple(アップル)とGoogle(グーグル)を、「戦略的市場地位(SMS)」を持つ企業として正式に指定する方針案を発表しました。
これは、両社がスマートフォン市場で形成している「複占(デュオポリー)」状態(2つの事業提供者が商品またはサービスの市場を支配している状況のこと)に対し、英国独自の新しいルールを適用し、より公正な競争を促すための、極めて重要な第一歩となります。
英国版デジタル市場法
DMCC法は、EUのデジタル市場法(DMA)に相当する、英国独自の新しい法律です。この法律により、CMA(英国の競争・市場庁)はデジタル市場で圧倒的な力を持つ企業を「戦略的市場地位(SMS)」にあると指定し、その企業に対して個別の「行動要件(conduct requirements)」と呼ばれる、法的拘束力のあるルールを課す権限を与えられています。
企業がこの行動要件に従わない場合、CMAはその企業の全世界での年間売上高の最大10%に相当する、巨額の罰金を科すことができます。
10%というと、Appleで383億ドル(約6兆円)、Googleで約 348億ドル(約5.5兆円)です。相当な金額であることがわかります。
なぜAppleとGoogleが?CMAが指摘する「デュオポリー」状態
CMAが最初の指定対象としてAppleとGoogleに焦点を当てた理由は、両社がモバイルエコシステムにおいて、他を寄せ付けない支配的な力を持っていると判断したためです。
- CMAの指摘: CMAのサラ・カーデル長官は、「AppleとGoogleのモバイルプラットフォームは、英国経済にとって極めて重要」であるとし、両社がiOSとAndroidというOS、App StoreとGoogle Playというアプリストアを通じて、事実上の「デュオポリー」状態を築いていると指摘。この力が、競合他社のビジネスや、消費者の選択肢に大きな影響を与えていることに懸念を示しました。
- 対象となる事業分野: 今回の指定が対象とするのは、両社の「モバイルエコシステム」全般で、具体的には以下の事業が含まれます。
- モバイルOS(iOS, Android)
- アプリストア(App Store, Google Play)
- ウェブブラウザ(Safari, Chrome)および、その基盤となるブラウザエンジン
今後、両社に課される可能性のある義務
SMSに指定された場合、AppleとGoogleは、CMAが定める「行動要件」に従う義務を負います。CMAが示唆しているルールの具体例としては、以下のようなものが挙げられています。
- アプリストア外への誘導(ステアリング)の許可: アプリ開発者が、App StoreやGoogle Playの手数料(最大30%)を回避できる、自社ウェブサイトでの安価なサブスクリプションプランなどを、アプリ内からユーザーに案内することを許可する。
- ブラウザや検索エンジンにおける「真の選択肢」の提供: デバイスの初期設定時などに、ユーザーがデフォルトのウェブブラウザや検索エンジンを、より簡単に、そして公平に選択できるような仕組み(選択画面など)を導入する。
- 自社サービスの優遇禁止: 自社のアプリやサービスを、競合他社のものよりも検索結果などで有利に表示することを禁じる。
アプリ開発者的には手数料回避は少し嬉しいかもしれませんね。
とはいえ企業側からしたら年間売り上げの最大10%に加え、アプリ売り上げの手数料30%回避は相当な痛手となること間違いありません。
Apple・Googleの反応と今後の見通し
この動きに対し、Appleは「英国が検討しているルールは、ユーザーが期待するプライバシーやセキュリティの保護を損ない、我々の技術革新を妨げる可能性がある」といった趣旨の声明を発表し、懸念を表明しています。
CMAによる今回の発表は、まだ最終決定ではありません。今後、関係者からの意見公募(コンサルテーション)期間を経て、最終的な指定と、具体的な「行動要件」の内容が決定されることになります。
まとめ
英国CMAによるAppleとGoogleの「戦略的市場地位(SMS)」への指定方針は、EUのDMAに続き、巨大テック企業の市場支配力に対する規制が、世界的な潮流であることを改めて示すものです。
EUのDMAが一律のルールを適用するのに対し、英国のDMCC法は、企業ごとに合わせた、より柔軟でオーダーメイドな規制を課すことができるのが特徴です.今後、英国でどのような独自のルールが形成されていくのか。その行方は、世界のデジタル市場の未来を占う上で、大きな注目を集めることになりそうです。
どのようなルールが適用されるのか、今後に注目です。


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